「ああ、日本一高い那智の滝の次に高いからってそう呼ばれているんやして」
荷台の男の一人が答えた。
「しかしよぉ、あそこに行ったとなると難儀やしょなぁ」
荷台から降りていた体格のいい中年男が腕組みをする。
「なんかあるんでっか?」
ワーポンの問いに今度は荷台の男が顔を突き出して答えた。
「宗教団体に占領されとんやっしょ」
「宗教団体?」
ハセポンが歩み寄って眉をひそめる。
「裏見滝っちゅうところがあるんやしょ」
その言葉に釣りキチさん子が反応した。
「裏見滝って確か、去年うちのマネージャーがその裏見滝とやらに写真を撮りに行って白装束の団体に追い返されたって言ってたわ」
荷台の男は釣りキチさん子に目を移すと頷きながら話を続けた。
「そうや、その白い帯をグルグルに巻き付けたミイラみたいな気色の悪い奴らあやっしょ。何年か前からあそこにでっかい倉庫を建てて数十人で共同生活するっちゅうて居座っているんやしょ。あの滝の中腹に滝の裏側に入れる場所があってそこを裏見滝と呼んでな、そこに行くと亡くなった人との交信ができるらしいんやして。一晩中鐘やら太鼓を鳴らすんでしょっちゅう地元とトラブルになっとんやがな」
「すると上北さんは自分の奥さんに会うためにその裏見滝とやらに行ったんでっかな」
と、ワーポンが得心したようにボクらの方に振り返った。
裏見滝がこの世とあの世を繋ぐ結界というのはありそうな話ではある。
「そのとおりかもしれんけど、あんまりあの連中とは関わりたくはねえっしょな」
中年男が腕組みをしたまま口をゆがめる。
「うちのマネージャーは二回目はその宗教の人たちにうまいこと話をして裏見滝に入れてもらったというてたわ。でも、やっぱり写真は撮らせてもらえんかったって」
釣りキチさん子はそこまで言うとスマホを取り出し、「あたし、あいつに電話したるわ」
とマネージャーを呼び出した。
その間に真ん中に立った紀美代が皆を見渡す。
「とにかく行ってみましょうよ」
と紀美代は軽トラの助手席に乗り込む際に荷台に向かって
「ツネさんは消防に事情を電話しといて」
とドアをバタンと閉じた。
ボクらは狭い林道を順番にUターンすると軽トラを先頭に金屋町に向かうことになった。
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